[携帯モード] [URL送信]



それは、初めて地上に出た日。タンナにとって、喜ばしい日になるはずだった、夏のある日。

「っふぅ…ここが地上かぁ!」

土から這い出したタンナは、眩しい地上に目を瞬かせながら嬉々として叫んだ。

「ん、あそこの木がいいかな」

木に向かって進んでいく。と、その時、誰かに呼び止められた気がして、後ろを振り返った。





「…な…に……こ、れ…」

邪悪なほどの白銀がギラギラと反射する、まっ平らな地面。
そこに転がる、粉となって風に飛ばされる、茶色の塊。

(助けて…)

どこからか、呻くような声がする。ハッと我に返ったタンナは、声の主を探して元来た道を戻った。

「誰!?どうしたの!?どこにいるの!?」

ただ目の前の、風化された塊が怖くて、その存在が何なのかを知るのが怖くて、声の主を求めた。

(ここから出して…)
(外に出たいよ…)

その言葉で、タンナは悟ってしまう。

(早く…出して…)
(ここから出たいよ…)
(誰か助けて…)
(出してよ…)
(出られないよ…)
(助けて…)

白銀の下、
今、タンナ自身が這い出したように、そこには幼虫達がいる。
遠くから、足音がした。大きな生き物の、動く影。パリ、という音。

目の前で粉々になる蝉の死骸



[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!