深く永久に…3
すっかり日も落ちて目の前には閉店を知らせるcloseの看板。
でも躊躇うことなく扉を引けばカランカランと鐘の鳴る音と共に扉は開いた。
「すみませんが本日は……っと、藤堂君でしたか」
「こんばんは、山南さん」
丸い眼鏡を掛けて柔らかな笑みを浮かべるこの人は人工生命体の第一人者で名前は山南敬助。
山崎君を造ったのもこの人。
「お待ちしていましたよ」
「遅くなっちまってごめん」
第一人者なだけあってかなりの腕前らしいんだけど、研究に没頭するがあまり周りが見えなくなる時があるっつーか…
とにかく一度研究し出すと止まらない。
「構いませんよ。これといって急な仕事も入ってはいませんでしたので」
人当たりの良さそうな笑みを浮かべてはいるものの手元にはアンドロイドの設計図。
山南さんはとても忙しい人だ。
腕も良いし、厳しいながらも優しい人柄に惹かれ山南さんを頼ってくる人は少なくない。
俺だって山南さんにアンドロイドを造ってもらいたくて書類やら金やら集めたけど完成するまでに二年待った。
「今日は引き取りに来る日でしたね」
そう言って座っていた椅子から腰を上げ、近くに備え付けられている機械に触れては開くまるで金庫を思わせる重々しい扉。
「藤堂君のアンドロイドは見本となるサンプルが多かった為、かなり希望に近い出来となりましたよ」
楽しげにそう言いながらパネルに指先に触れると大人が余裕で入れる程の硝子で出来たカプセルが出てきた。
「…ッ……」
カプセルの中にはずっと逢いたかった人と同じ格好をしたアンドロイドが眠ってる。
「ではIDをお願いします」
アンドロイドはその主となる声紋で初めて起動する。
裏切って勝手に暴走しないように主の命令は絶対。
今は少なくなったらしいけど、昔は主を殺して自由気ままな暮らしを求めるアンドロイドもいたらしいし。
「IDナンバー、F6943532」
静かに与えられたIDナンバーを紡げば閉じられた瞼がゆっくりと開かれる。
そして俺を見て笑みを浮かべると懐かしいずっと聞きたくて仕方なかった声音で俺の名を紡いでくれた。
「平助」
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