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深夜の逢瀬2






時刻は深夜三時四十五分。


店員は俺様一人。



今か今かといつになくそわそわして待ってる姿は恋する乙女そのものなんじゃないかと気がついたら思わずガックリ肩が落ちた…。




そもそも俺様は男。

そして相手も男。




どうなりたいのか自分自身でもよくわからない。



確かに綺麗で美人でそこらの女よりもずっとずっと魅力的。


でも同性で男同士なわけで……






ぐちゃぐちゃと頭ん中こんがらがらせてあれこれ考えてたら不意に軽快な音と共に扉が開いた。




─彼だ──






「いらっしゃいませ〜」

「セブンスターのライト一つ」



いつもの耳に心地良い低音。



疲れているのか吐息吐き出しては眠たげに欠伸を洩らしている。




「随分と疲れた顔してますよ」



軽い感じ声を掛けながら棚から彼が愛用している銘柄の煙草を一箱取るとピッとレジ打ちしてはカウンターへと置いた。




「不向きな仕事してる上に愛想笑いなんてただ疲れるだけだろ?」




毎回漂う女物の香水の匂い。




「苦手なんですか?女の人」


「why?」


「匂い移ってますよ。それって女物の香水ですよね」




俺様の言葉に一瞬驚いたように隻眼を見開くも直ぐに不機嫌そうに舌打ちしてはスーツのポケットから財布を取り出しカウンターに千円札一枚を置いた。




「あの女いい気になりやがって」


「あははは」




きっと自分についた女の匂いすらわからない程、嗅ぎ慣れてしまっているんだろうなぁ…


笑って返したけど胸の奥がチクリと痛い─……




「お前ここでバイトしてるのか?」




不意に向けられた言葉。




「まぁ…」


「金に困ってるのか?」


「……………」




あのさ、普通何回か顔は合わせたことあったけど、初めてまともに喋った人にそんなこと聞く?



確かに金には困ってる。


物心つく頃から居なかった両親。


親戚中、邪魔者扱いされながらたらい回しにされて、高校入学と同時に家を飛び出した。



それから生計を立てる為にバイトしてギリギリながらもなんとか今日まで生きてこれた。



「そりゃ…まぁ…」


「深夜バイトしてるってことは夜強いんだよな?」


「まぁ、それなりに」


「酒は飲めるか?」




話してみたいと確かに願った。


だけど望んでいたのはこんな質問攻めな会話なんかじゃなくてもっと普通の、友達同士がするような会話を望んでたのに……



仲良くなって名前聞いて─…、だけど実際は訳の分からない質問ばっか。



沸々と沸き上がる怒り。

思わずカウンターに置かれた鷲掴みにして目の前の人を睨み付けた。




──が、俺様の心情とは裏腹にいきなり肩を掴まれ近付く顔。



「ちょっとアンタ一体──」


「金は払う。ちょっと頼みたいことが…」






この時はっきり断っておけばよかったんだ─



でも彼があまりにも真剣だったから……






断れなかった自分自身を酷く悔いた。






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