─老いることなき肉体と滅びることなき魂を与えん─
歳を取らない身体─…
転生を繰り返す魂─…
親もダチも時の流れ通りに歳を取り、いずれは死んでいく─…
だが、俺や佐助、慶次はその流れに逆らって老けていくこともなく、老いで死ぬこともない─…
─歳を取らないこと─
─変わらないこと─
─置いて行かれること─
─生き続けること─
これから始まるであろう長い年月の中で、どれだけの喜びと悲しみに出逢うんだろうか…─
転生を繰り返す魂の記憶はどうなる?
まさか前世の記憶も全部背負って、また決まった二人の顔毎日拝みながら生きろというんじゃねェだろうなァ?
人生なんざ一度きりだからこそ楽しい。
次があるとわかっちまったら楽しめるもんも楽しめねェ。
今はまだ普通の生活が送れている。
恐らく成長が止まり老いなくなるのは成人してから……
二十歳前後だろう。
いつも俺の身を心配してくれる小十郎。
姿くらましたら馬鹿みたいに探し回るんだろうな、きっと。
アイツはジジィになっても『政宗様!』って叫んでそうな気もするしよ。
学校が終わり、珍しく部活がなかったのか腹が減ったと廊下で騒ぐ幸村を何とか黙らせ早々にマンションへと帰った。
鍵を差し込まずノブを掴んで回してみれば予想通り開く扉。
「お帰りなさいませ、政宗様」
「まだいたのか。いいのか?仕事は」
小十郎の仕事は親父の秘書。
いくら俺の世話役兼教育係だとはいえ、いつまでもこんなところにいていいはずがない。
「今週いっぱい休暇を頂いていますので」
「へぇ…」
珍しい…
小十郎が親父の秘書だと言ってもただの秘書じゃねェことぐらい俺にでもわかっている。
親父がお袋よりも小十郎を大切に想っていること。
二日以上の長い休暇を貰ったことがあるなんて今まで聞いたこともねェ。
それぐらい親父は常に小十郎を自分の側に置いていた。
「政宗様、いくつかお聞きしたいこと──」
「こんばんは〜♪今日からお世話──ッ」
いつになく真剣な表情浮かべる小十郎に何事かと靴を脱いで部屋にあがろうとすると突然チャイムもなしに扉が開いた。
「…げっ…、片倉サン…」
「……猿飛」
振り返らずとも声を聞きゃ誰かだなんてすぐにわかる。
目の前には険しい表情の小十郎。
背後には恐らく小十郎と同じように険しい表情を浮かべているだろう佐助。
今夜は静かな夜は過ごせないと思うと思わず溜息が洩れた……
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