遙か古より/番外編(佐助)
幼なじみの政宗の父親はちょっと名の知れた会社の社長サン。
裕福な家庭で政宗はいつも流行りの玩具や綺麗な服を着てたっけ。
正直、その当時はかなり政宗が羨ましかった。
それに引き換え、俺様は顔すら全く覚えていない両親に捨てられ施設にいるところを武田信玄に引き取られ、裕福とは言えないものの、毎日平凡な日々を送ってた。
政宗と出逢ったのは幼稚園に入る少し前。
慶次とデカい家だね〜、なんて言いながら嫌みなほどデカい門を見上げてた時、いかにも高そうな黒い車が止まり窓を開けてこちらを見ていた子がいた。
それが政宗。
それから時折、門から庭を覗き込んでは政宗に見付かって次第に遊ぶようになっていった。
暫くして近所にある幼稚園に慶次と入園。
政宗はいなかった。
まぁお金持ちはそれなりのいい幼稚園に行くんだろうし気にもしなかったんだけど……
……秋になった頃、片目に眼帯をした政宗が幼稚園に転入してきた。
一緒に遊んでた頃は眼帯なんてしてなかったのに……
「め、けがしたの?」
事情をよく知らなかった俺様はその日にそう話し掛けた。
けど政宗は何も言わなかった。
ただ泣きそうな顔で俯いていたのを今でもよく覚えてる。
幼稚園でいつも独りぼっちの政宗。
一緒に遊んでた頃はあんなに明るくて元気だったのに今では教室の隅っこで一人で遊んで決して外では遊ばない。
そして帰り。
みんなお母さんやお父さんが迎えにくるのに政宗のところは親が迎えに来たことなんて一度たりともなかった。
迎えに来るのは怖そうな顔のお兄サン。
その人が政宗の世話をしている片倉小十郎だと知ったのは暫くしてから。
「あのひと、まさむねのおにーさん?」
「ちがう。こじゅろーはおれのせわするひと」
きっと両親が仕事で忙しくて迎えにこれない代わりにあの人が来てるんだと思ってた。
「政宗様、お迎えにあがりました」
「…………」
政宗の頭をなでて手を繋ぐ二人の様子にな〜んか気に入らなくってさ。
「おれさまのまさむねにさわらないでよ」
って言って無理矢理片倉サンと手を繋ぐ政宗を引っ張った。
「まさむねはおれさまのおよめさんなんだから」
「は?」
政宗にそんなこと言ったこともなかったけど、幼稚園に居る時はずっと一緒にいて、給食の時間だっていつも政宗の隣にいた俺様。
政宗ってば、女の子みたいに可愛くってさぁ。
可愛くて可愛くて俺様大好きだったんだよね。
「およめさんって…さすけ…」
「おれさま、まさむねとちゅーだってしたもん」
ね〜?と同意求めるように、にこやかな笑みを政宗に向ければ思いっきり左右に頭を振る政宗と眉間に皺寄せる片倉サン。
まぁ実際政宗とキスなんてしたことなかったけど、なんか……直感ってやつ?
このままだと政宗が取られちゃうっていうか……
だから俺様のものだって見せ付ける為に、片倉サンの前で政宗にキスした。
頬なんて中途半端な場所じゃなく唇に。
そしたら面白いぐらいにみるみる顔を真っ赤にする政宗と、鬼のような表情になっていく片倉サン。
そして優越感に浸ってる俺様の頭をグーで殴った。
普通殴る?
可愛い可愛い幼稚園児を。
それからというもの片倉サンは俺様を敵視し、また俺様も片倉サンを敵視。
これが俺様と片倉サンの犬猿な仲が始まった時のお話──……
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