『こんなところまできたのに……』
不貞腐れたように呟く佐助の前には所々壊れかけている祭壇。
祭壇には三つの掌程の宝玉。
暗かったせいも俺達が無知だった為もあって、ただの硝子玉にしか見えなかったその存在に俺達は何の警戒もなしに手を伸ばした。
『けいじ……』
『だいじょうぶだって、まさむね』
『ちょっ!たまにはおれさまをたよってよ、まさむね!』
『いやだ』
『ひどいよ……』
ガキの頃から簡単に好きや愛してる、なんて言葉を口にしてきた佐助。
『まさむねはおれさまのおよめさんなのに…』
『おとこどうしはけっこんなんてできねぇんだよ、ばーか』
愛情に飢えていた俺を幼いながらも知っていた佐助。
例え慰めだったにしても求めてくれるその言葉が空っぽだった俺の心を満たしてくれた。
『おれこれもってかえってまつねーちゃんのおみやげにしようかな』
そう言って慶次が手にしたのは漆黒の玉。
自然と俺は群青、佐助は純白の玉を手に取った。
その時、強い光と共に聞こえたんだ…、言葉が…
─神に認められし幼き子らよ─
脳に直接語りかけるような声──
─我らを取り入れ世界に平穏を─
─汝らに我等の力と─
─老いることなき肉体と滅びることなき魂を与えん─
『…きこえた?』
『きこえた』
語りかけられた言葉の意味なんて殆どわかっちゃいなかった癖に俺達は得体の知れないもんを体の一部として取り入れることを承諾した。
だが、力を得る為には何かを差し出さなければならなかった。
酷い話だぜ。
世界に平穏をもたらしてほしいと頼んでおきながら、いざ引き受けりゃ何か差し出せときたもんだ。
佐助と慶次が何を差し出したのかは知らねェ。
俺が差し出したものは……
両親からの愛情
もう無いに等しかったし、無いと分かりきっていた方が変な期待をしなくて済む。
こうして俺達は他の奴にはない特殊な力を手に入れた。
ただまだその時は幼さ故に気がつかなかった。
─老いることなき肉体と滅びることなき魂を与えん─
その言葉の意味を………
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