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じっとりと、春ならではの汗が背中を濡らす。

多くもなく、でも確実に汗をかくのが気持ち悪くてたまらない。


「あー、眠―」

「あはは、なまえちゃんめちゃくちゃ眠そう」

「だってなんか春って眠いよー
それにつけてこの長い話だもん」


こりゃ眠くもなっちゃいますわ。

千代ちゃんは眠くないの?ときくと、眠いけどねー、ちょっと頑張るの、なんて返されてしまった。
千代ちゃんいいこ。
あ、あたしが不真面目なだけか。


入学式恒例の校長の長ったらしい話を聞き流し、ようやく入学式が終了した。

そこから各自で自分のクラスへと向かう。

残念ながらあたしと千代ちゃんはクラスは離れてしまった。

1年9組。なんでこんなにクラス多いんだ、と悪態をつきながら教室へ入った。

クラスを見回しても、知った顔なんて居やしない。

席順が黒板にはってあったので、その通りの席に着く。


ちらりと隣を見れば、可愛らしい男の子が座っていた。

目がくりくり大きくて、ほっぺにはそばかす。
イケメン、と呼ばれる部類だとは思う。

ていうか女のあたしより可愛いよね、明らか。


そんなことを思いながらポケットからケータイを取り出す瞬間、つるりと手が滑ってしまった。

あ、なんて呟く。
ケータイが堕ちていくな、そんな考えしか持てない自分。
なんてのんきなの。


呆然と落ちていく様を見ていたら、
ケータイの下に不意に手が伸びる。

しっかりとキャッチされたマイケータイ。

なに、これ。
どこから手は伸びてんの。


「ほら、これ、あんたのだろ。」


パッと顔を上げると隣の席の男の子。

ケータイをキャッチした腕は彼から伸びていたのだ。

「ありがと…
ケータイってまさか落とす前に拾えるものだとは思ってなかった」

「人によるだろ
俺野球やってるし」


もう落とすなよ、なんて呆れ顔で言われながら手元へと戻ってきたマイケータイ。

ストラップあんまりつけてなくてよかった。


「野球部、あたしの友達マネジしたいって言ってたよ」

「ふーん。お前はしないの?」

「うん、向いてない感じする」

ふと思い立って出した話題が続くと思わなかった。
初対面だし、名前も知らない相手だ。


「泉孝介」

「は?」

「俺の名前
お前は?」

「みょうじ なまえ」

「ふーん、まぁよろしく」


にや、と彼はいやらしく笑った。
嫌な予感しかしないんだけど。





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