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『泉ー、ピクニック行こっか』
ミンミンとアホみたいに泣き続けるセミに嫌気がさしながら重たい足を動かす。目指すのは海。
結構遠いから必死に足を動かさねば。
「なー、海っつったって行ってなにすんだよ」
そう問いかけてきた泉に、別にー、特に考えてないー、とだらだら返すとため息が聞こえた。
『ため息は幸せがにげちゃうよ』
「ため息よりもお前の意味不明な行動によって幸せが逃げそう」
…失礼だな、おい。てゆか、
『セミってさ、バカみたいな一生だよね』
子供残すためだけに鳴き続けて一週間で人生が終わるなんてさ、俯きながら坂道を登る。
「まあな」
でも、
「一週間っつー短い間だからこそ頑張れるんじゃねーの」
俯いていた泉の顔がぱっと上を向いた。ほの暗かったあたしの心に光がさした気がした。
『そっか、そういうもんか。あ…』
俯いていた顔をあげると広がる青。どこまでも続く無限に感じる。
『着いちゃったね』
「おー」
『がっこサボってまで来るとこじゃないね』
「おー」
『なんかさ、』
高校生になるって、大人みたいなイメージだった。
『高校生になるともう大人でさ。だってあれじゃん、結婚とかもできるじゃん?』
全ての決定権があたしの掌の上にあって、選択肢も広がって、あたしだけでも生きて行ける気ぃしてた
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