【ignorance】
[4]
 
「別にイイぜ。受けてやるよ」

 即答で承諾したのは、ファオだった。

「ファオっ!」

「相手は犯罪者なんだろ? んじゃ遠慮はいらねぇよな」

 ファオが眼に炎が宿ったように滾る様を見て、ウィゼンはやれやれと肩をすくめた。

「この戦闘狂が。どうなっても知らねぇぞ」



 その時である。


「きゃぁぁぁっ!!!」


 シマドリの女店主の叫びに、店内に瞬時戦慄が走った。

「邪魔するぜぇ!」

 店の入り口に扉以上の大穴を開けた闖入者は、達磨のような体型をした大男で、だらしなく伸びた髭の口で葉巻を銜えながら吠えた。

「今からこの店はこのギャロック様の遊技場だ!! 邪魔する奴は容赦なく叩き潰すぜ!!」

 ギャロックと名乗りをあげた大男はどよめき逃げ惑う客衆を睥睨した後、にたぁ、と剣呑に笑んでみせた。

「奴です……剛腕殺人鬼ギャロック・ドニスター。暴力にまかせて所々を乗っ取り、重ねた犯罪は数知れず…」

 ソノカが静かに憤慨の炎を燃やしていると、大皿に盛られた最後の一口を飲み込んだファオが立ち上がり、漸くギャロックを自分の視界に入れた。

「うわっ…何だあれ。雑魚なくせに力の誇示をしたがる悪党の典型タイプだな」

 すると先方に声が届いたらしく、ギャロックは瞬時にファオを睨み、耳に障る濁声を発した。

「何か言ったか? 貴様」

「おう、言ったぜ肉ダルマ。ザ・コ、ってな!」

「…んのクソガキっ!!!」

 息巻くギャロックに、ファオは続ける。

「クソガキだと? ……いいぜ。二度と口をきけないようにしてやるよ」

 完璧に、乱闘の火蓋が切られてしまった。実に呆気なかったようで、ファオはしてやったりと口の端をつり上げた。それを見たギャロックの額に青筋が立ったのは言うまでもない。

「ぶっ……ぶっ殺してやるううっ!!!!」

 ギャロックの怒号。そして即、体型に不釣り合いなまでに素早い動きで床を蹴り、拳がファオ目掛け飛んでくる。それをファオがいとも軽く回避すると、強打はカウンターテーブルを穿ち、大破した。



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