【ignorance】
[1]
人々が武器を手にしたのはもう遥か昔の話で
魔法という名の化学精錬が生み出されたのも同じ頃
25世紀
王都ヤーレコムに
それらを悪用した
大犯罪旋風がまきおこった
これは その幾許か年月を経た後の
小さな逸話……
【ignorance】
children's eyes
「ひゃっほーいっ!!」
王都ヤーレコム、東のテルタスの一角『酒場シマドリ』より、歓喜の奇声が谺した。
中央のテーブルを陣取り、オレンジジュースのジョッキを片手に大声で笑う赤毛の少年の眼前にあるのは、些かくたびれた札束。そしてその量たるは、テーブルにどんと置かれているアタッシュケースが蓋を閉めて持ち運ぶ機能を果たせない程の金、金、金の山。
「今夜はパーっと遊ぼうぜっ、ウィゼン!」
赤毛の少年は、同じテーブルで酒を呷っているウィゼンの肩をバシバシと叩きながら哄笑する。ウィゼンは、ほぼ白に近い白灰色の髪と深海色の瞳を持った少年で、年の頃は派手な赤毛の少年と大差変わりない。
「あー……俺は酒が飲めればいいや」
間延びした返事と同時に欠伸を噛み殺し、開ききらない瞳で傍らの相棒を見やりながら言葉を次ぐ。
「ただし、金に構ってる暇が俺達に無いことを忘れるなよ、ファオ」
「はいはいわかってるよわかってますとも」
赤毛の少年…ファオは耳にタコとでも言いたげに、軽くウィゼンをあしらった。
その時。
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