絆されるってこういうことらしい
(ダグラス×ハイリィ)
『待ってジャスティン!』
『ユーリア、もう無理だ、時間が無い』
『嫌っ、行かないで!』
「オイ、何観てんだよ」
テレビにかじり付くハイリィ。画面の中で悲劇を演じるのは、今彼女の隣に腰を下ろした男、ダグラス=イグナイト。
「んー……」
『じゃあ、誓って』
『どんなに離れても、俺は君を愛し…』
台詞の途中で映像がパッと消え、鏡になった暗黒にダグラスとハイリィの姿が映り込む。
「……何で消しちゃうの?」
「そんなもの観なくたって、隣に俺が居るだろ。何度だって『愛してる』って囁いてやるぞ」
決まったと言わんばかりにダグラスは、ハイリィの頬に手を伸ばす。その隙にハイリィの手はダグラスが持つリモコンに伸び、それをサッと奪った。
「あっ」
「関係無いでしょ! 私は映画を楽しんでるの。ダグラスの演技も格好良くて大好きだし」
ハイリィは再び映像に夢中になる。
「……ハイリィ、押し倒していいか?」
「邪魔しないで。部屋追い出すよ」
「…………」
ダグラスは唾を飲み、行き場の無くなった手を渋々引っ込めた。
それから小一時間、肩を並べて観た映画は終幕、エンドロールが流れ始める。
隣を窺うと、目を潤ませ頬が赤らんだハイリィの横顔。
堪らずダグラスは頭を抱き寄せ貪るように唇を奪った。
暫くその感触に浸った後、細い腰に手を伸ばそうとした時。
「あっ、時間っ!」
ハイリィが突如大声を出して立ち上がった。空を切る腕。ダグラスは勢い余って前のめりになる。
「メグと買い物するって待ち合わせしてたんだった! 行ってきます、夕食までには帰ってくるから」
バタバタと駆け出していくハイリィを、黙って見送ることしか出来ないダグラスであった。
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