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で、残されたのはキタローと私だけ、ってね。ただボーっと過ごすのも退屈だし、会話を続けよう。……話題、話題。
「キタロー、何か話題」
「えっ」
「あ、ごめん、無茶振りだけど、何か無い? 私に聞きたいこととか」
「ええと……」
考え込むキタロー。
「うーん……あ、桐条さん音楽聴くんだよね。た、例えばどういったのが好き……ですか」
「さっきは大層な趣味みたいに言ったけど、そこまで詳しいわけじゃないの。ロックバンドに少し興味があるくらい」
「バンプとかエルレとか?」
「……たまに聴くけど、ほとんど地元のライブハウスで生演奏聴くばかりで」
「……あぁ、成程。じゃあパンプキンズとか知ってる……ますか」
何だろう、この違和感満載な会話。
「敬語、不自然だよ。やめたら?」
「あ、うん、ごめん……やっぱ普段使ってないと慣れないや」
「私、恐い? なんか尚くんも私のこと恐がってるみたいなんだけど」
私も嫌々来たのは確かだけど、あからさまにそんな顔をしてた覚えは無い……はず。
「恐くなんて、ないよ。ただ俺は、ちょっと……どう話したら良いかわからなくて。女の子とあまり喋らないから」
ああ、そういうこと。
「緊張するくらいなら女の子相手だなんて思わなくていいよ。普通に話して」
「……うん」
無茶苦茶なことを言ってしまっただろうか。でも、心なしかキタローの表情が柔らかくなった気がする。
「パンプキンズは?」
「好き。でも私はどちらかと言えばストラマー派」
「本当? 俺も」
「えっ、じゃあサンフラとか」
「うんうん、あと重低団とか」
うわぁ……何だろう、この興奮。地元インディーズバンドの名前を出したところで蜜子や結は首を傾げるだけなのに、キタローの口から次々それらが飛び出してくる。
「……私、キタローととっても仲良く出来る気がするわ」
「俺も……なんか壁が溶けた感じ」
ここですかさずケータイを取り出す。今日はする必要が無いと思っていた動作だ。
「アドレス交換しない?」
「喜んで。桐条さん着信音何にしてる?」
「ストラマーの『エトセトラ』サビの部分」
「俺は『花束』……凄いな。俺、今日来て良かった」
「……うん」
私も、来て良かったかも。
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