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長い長い、赤絨毯の廊下を歩く。そして、その廊下が途切れた、突き当たりの部屋。そこが、最後の目的地だった。

コンコンコン。

「どうぞ。」

三回のノックの後、中から入室の許可が下りる。

「失礼します。」

ドアを開け、一礼。ゆっくりと顔を上げると、イスに腰掛けた青年の後ろ姿が目に入った。

「洗濯物を持ってきました。ベッドメイクもさせていただいてよろしいでしょうか?」

太陽の光を窓から受け、青く光る黒髪をサラリと揺らし、イスに腰掛けた青年が振り返った。

通った鼻筋に、長い睫毛、アイスブルーの瞳、という何とも整った顔立ち。すらりとした背格好と、組まれた長い足。歳の頃は、二十歳かそこら。

美青年としか呼称しようがない男が、ゆったりとイスに腰掛けていた。

この美青年こそが、私のご主人様にしてブランディル家の若き当主。

エレク・ブランディル、その人。

その美青年エレクは、ゆったりとした笑みを浮かべ、私を見た。

「構わないよ。」
「はい、失礼します。」

一応礼儀に則って、主に一礼し、入室した。

そのまま一回も視線を合わさないまま、ベッドルームのクローゼットへ一直線に向かった。

カゴを置いてクローゼットを開け、手早く洗濯物を収め、続いて真っ白なシーツを取り出す。
そして、ベッドへ向かい、掛け布団をどけ、シーツを剥ぎ取り、シーツをバサッと広げた。シーツに皺が寄らないよう丁寧に、それでも成るだけ手早く作業を進めていると、背後に人の気配を感じた。

シーツを整える手を止め、背後を振り向く。そこには、件のご主人様。

「・・・何か、御用ですか?」

単調に問いかけると、見目麗しいご主人様は、己の唇を人差し指で撫で、目を細めた。

「いや何、女性が働く姿はいいものだと思って、ね。」

・・・何が言いたいのかはっきりしないが、とりあえず無視だ。
私は視線を逸らし、ベッドメイクに集中することにした。背中に注がれる視線は、きっぱりさっぱり無視した。

 

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あきゅろす。
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