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「り、理由は言えないが、次の職の心配はいらない。ここよりいい働き口を用意してあるから、とにかく、ここに行ってくれ。」

そう言って、紙切れを一枚、手渡された。そこには、手書きらしい地図が記されていた。

「いや、あの、でも・・・突然そんなこと言われても・・・。」
「大丈夫!ここより全然いい所だから!何も心配はいらないよ!さぁ、早く準備して、行きなさい。」

何だか追い出されるような形になりながら、私は店長の部屋を出た。外で聞き耳を立てていたらしい、さっきの女の子が、心配そうな顔をして立っていた。

「何か・・・解雇だって。」
「で、でも、ここよりいい働き口だって店長も言ってたし・・・寂しいけど、リザちゃんのためかもしれないよ。ううん、きっとそうよ。店長がそう言うんだから。」

確かに、店長は信頼できる人だし、私を悪いようにはしないだろうけど。
何せ、急展開の事態についていけてないのが現状だった。

「・・・まぁ、とにかく新しい職場とやらに行ってみる。」
「うん。頑張ってね!」
「ありがとう。」

私は、笑ってレストランを後にした。顔だけは。
頭の中は大混乱だった。

昨日は家を追い出されて、今日は仕事場を追い出されて・・・。

一体何がどうなってるんだか、さっぱりわからない。
とにかく、地図の場所に行ってみるしかない。
そう思って、手の中の紙切れに目を落とした。

レストランから、その場所への道順が、丁寧に書かれていた。てくてくと、その道順を辿っていく。
しばらく歩いて、その場所に辿り着いた。

そこには、バカみたいにデカくて立派なお屋敷が、でーんと構えていた。
私は、呆然として門の前に立っていた。

手の中の地図と、周りの番地と特徴を見比べる。確かに、地図は、このお屋敷を指していた。

何で、こんなところに辿り着いたの?
道、間違えた?いやいや、地図の通りに歩いてきたはず。
もしかして、地図が間違ってたのかも。ありうる。きっとそうだ。

「リザリー・メーリケさんですか?」

悶々と悩んでいると、不意に名前を呼ばれた。
声の方に目を向けると、背の高い、清楚な服装のお兄さんが姿勢正しく立っていた。

お屋敷の、門の向こうに。

 

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あきゅろす。
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