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「おはようございます。」
「おう!朝から盛大な怒鳴り声だったな!」

厨房に入り挨拶をすると、火にかかった鍋の中身をかき混ぜていた、コック服のおじさんが振り向いた。この人は、このお屋敷のコックの、ログ・マクウィンさん。

私はログさんが言った事に、ははは・・・、と力なく笑って返した。

「あのバカ貴族のせいですよ・・・。」

言いながら、食器棚へ向かい、お皿やらフォークやらを取り出した。それを、盛り付けし易い様にログさんが立っている後ろのテーブルに並べていく。

「ははは、坊ちゃんを捕まえてバカ貴族とは。言うねぇ。」
「もう坊ちゃんなんて歳でもないでしょうに・・・。」

いい匂いの立ち込める厨房で、また一つ、大きな溜め息を吐いた。

そんな私を尻目に、ログさんはスープの味見をしていた。今日もいい出来だったらしく、ログさんは小さく、よし、と言ってコンロの火を止めた。

ひょいと出された片手に、スープ皿を置くと、それに美味しそうなスープを注いで、こちらに返した。それを受け取って元あったテーブルに置いて、私はサラダを和えはじめた。

「んで?何があったんだい?」

他の料理を盛り付けしながら、ログさんが何気なく訊いて来た。

「・・・言いたくないです。」

言いたくない。
思い出したくもない。
思い出しただけでも、腹が立つ。

ついつい、サラダを混ぜる手に力が入ってしまった。レタスがボウルの中でぐしゃりと音を立てた。

おっと、物に八つ当たりしてはいけない。

ログさんは、ふぅん、と言って、それ以上追求はせず、盛り付けをしていた。


無駄に広い広間の、無駄にデカいテーブルに、出来立ての朝食をセッティングしていると。

軽い音を立てて、広間のドアが開いた。
そこには、ルイードさんを従えた、黒髪の青年が立っていた。

「おはようございます。」
「やぁ、おはよう。」

一応、ぺこりと頭を下げると、軽い挨拶とともに青年が広間に入ってきた。私は、頭を下げたままジロッとその青年を睨んだ。
青年はまだ眠いのか、大きなアクビをしながら、朝食がセッティングされた席に着いた。
頭を上げてドアの傍に移動し、控えるように立った。
青年は、いただきます、と言ってもそもそと朝食のロールパンに手をつけた。

 

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