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明くる日もその明くる日も、彼女の家のドアを叩くランスの姿があった。一日目はフリージア、二日目はシクラメン、三日目はカトレア……色とりどりの花束を携えて訪ねるも、シャロネはそれを玄関先で受け取るとそそくさと奥に帰ってしまい、家の中まで通されることは叶わなかった。それでもランスはがっかりするでもなく、薄ら笑いを浮かべながら村の宿に戻るのだった。
初めてランスが彼女の家に足を踏み入れたのは、通い続けて六日経った日のことだった。
「こんばんは、シャロネ嬢。夕食は済んでおいでかな?
いつも花ばかりでは飽きやしないかと思ってね、今日はワインを持ってきたよ。この村の仕事ではなさそうだが、隣国から輸入したものみたいだ。僕は初めて見た銘柄だよ」
ドアの前でぺらぺらと宣うランスは暫く放置されていたが、やがてシャロネが顔を出し、じっと彼を見つめた。何かの合図と都合良く捉えたランスは、ずいと家の中に入り込んだ。
少女が一人で住まう部屋は、ベッドとクロゼットと暖炉だけがある殺風景なものだった。じろじろと物色していると家主の鋭い視線が刺さった為、ランスは逸らすように話を振った。
「花は、お気に召さなかったかな?」
悲しげな笑みを浮かべた、振りをして。
「花は好きよ。貰った花は地下の……菜園に生けてあるわ」
律儀な返答に面食らった顔をしてしまうランスを見て、シャロネは慌てて続けようとする。
「ガーデニングが趣味なのよ。珍しい花や繊細な植物もあるの。だから、地下に入ったら許さないから」
「肝に銘じるよ」
肝心の地下への入口は見当たらないことから、彼女はそれを厳重に隠しているらしかった。とうに感づいていたランスだったが、何食わぬ顔で目を瞑っていた。
「ワインも後で頂くけど、まずはお茶でもどうかしら。私は今丁度夕食後のティータイムにしようとしていたの」
「有り難く頂くよ」
「自家製のアップルティーよ。お口に合うかしら」
差し出されたティーカップを受け取ったランスは、まず香りを嗅いだ後、上品に口を付けた。その様子を、シャロネはじっと見ていた。
やがて力を失った手からカップが滑り落ち、床で音を立てたが、男の耳に届いていただろうか。四肢を投げ出した彼を見下ろす少女の瞳は、爛々と輝いていた。
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