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 時間が止まる。
 やがて、稲妻が走ったように退いたシャロネは、

「一週間」

 赤い唇で告げる。

「一週間、此処に通ってくださる? 八日目の朝を共に迎えたら、貴方の望むままにするわ」
 まるで無理難題を突きつける姫君のように、シャロネは上目遣いでランスを煽った。

「そうか。それでは精々頑張らせてもらうよ」

 ランスが涼しい顔で返すと、シャロネの瞳が僅かに翳る。

「明日改めよう。では、御機嫌よう、レディ」

 同じ挨拶を残しランスは、少女の視線を背に浴びながら歩き出した。



 鏡よ鏡
 この村で一番美しい私に
 王子様はいつ現れるの?

 暗く湿気を帯びた部屋の隅で、鉢植えの草を手折る少女が囁く。所狭しと並ぶ彩りの鉢植えは密林を思わせる程茂っているが、手入れが行き届いており、荒れ果てた印象は受けない。
 様々な色や形の植物を迷う事無く摘み取り、片手の器を埋めていく。

「また明日、ね」

 少女の瞳には決意が、赤い唇には歪んだ笑みが張り付いていた。





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