[3]
人里離れた草木生い茂る森を進み、ランスはひっそりと煙を吐く木造家屋を見つける。童話の住人の棲処を思わせる佇まいに微笑みながら、ドアを叩く。すぐに少女の笑顔が彼を出迎えた。
「あら……どちら様かしら?」
「御機嫌よう、レディ」
ぐいと歩み寄り、男の顔は少女のあどけない瞳に接近する。
「成程……噂通りの麗しい淑女だね、シャロネ嬢。会えて嬉しいよ」
「それはどうも」
少女――シャロネは、訝る色ひとつ見せずに微笑み返した。
「貴方は、初めて見る顔に出で立ちね。旅の御方?」
「蜜の香に誘われた愚かな蜂、かな」
「……ふざけた人ね、貴方も」
シャロネが一瞬、辟易の色を浮かべる。ランスはそれを見逃さない。
「“も”とは……君は随分甘い蜜を蓄えているんだね」
瞳を逸らした少女の右頬に、狩人の手が伸びる。
「どうしたら僕は、その恩恵に与れるだろうか」
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