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 人里離れた草木生い茂る森を進み、ランスはひっそりと煙を吐く木造家屋を見つける。童話の住人の棲処を思わせる佇まいに微笑みながら、ドアを叩く。すぐに少女の笑顔が彼を出迎えた。

「あら……どちら様かしら?」
「御機嫌よう、レディ」

 ぐいと歩み寄り、男の顔は少女のあどけない瞳に接近する。

「成程……噂通りの麗しい淑女だね、シャロネ嬢。会えて嬉しいよ」

「それはどうも」

 少女――シャロネは、訝る色ひとつ見せずに微笑み返した。

「貴方は、初めて見る顔に出で立ちね。旅の御方?」

「蜜の香に誘われた愚かな蜂、かな」

「……ふざけた人ね、貴方も」

 シャロネが一瞬、辟易の色を浮かべる。ランスはそれを見逃さない。

「“も”とは……君は随分甘い蜜を蓄えているんだね」

 瞳を逸らした少女の右頬に、狩人の手が伸びる。

「どうしたら僕は、その恩恵に与れるだろうか」




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