[3]

 飾りっ気の無い布切れのような装いをした少女。子供特有の甲高い声に、妙に大人びた口調が合わさり、妖しさを際だたせている。

「任務、頑張ってるみたいね。何か変化は無いかしら?」

「特に、無い」

「そう」

 二言三言会話を交わし、沈黙が続いた。
 ふと、少女が手を伸ばして、ヴィリアの額に触れた。

「リリオールに何か言われたね?」

 ヴィリアは言葉を返さない。

「キミがどんな道を選んでも良いさ。キミの為になるならね。でも」

 翡翠の瞳に熱が宿る。

「キミは私のものだって、忘れないでね。例え相手がリリオールでも、キミを陥れようとするなら、殺すよ」

 再び沈黙。

「……もう行くの?」

 ヴィリアは頷き、目を閉じた。踵を返すと、背中に声が掛かる。

「私の力は、キミの力だよ。困ったら、いつでも」

 少女が言いかけたところで、ヴィリアが制した。

「必要無い。私は私の力で、記憶を取り戻す」

 一度も顧みること無く、ヴィリアは鉄扉の外に出た。石畳を踏み鳴らしながら、呟く。


「……もう、空虚な自分が嫌なんだ」



→part4

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