[2]
聖アンジェリーク教会には、隠された通路が無数に存在する。地上部は教会としてディラン・スペンサー司祭が管理しているが、その地下にはリリオール率いる魔女狩り組織『黒条教団』が巣喰っている。正しく言えば、黒条教団は聖アンジェリーク教会に匿われている存在である。
戦死に因る漏洩を防ぐ為、地下への鍵を持っているのはリリオール、教会の神父、数名のシスターに限られている。アンリもその一人だった。
「では、開けますね。ベス」
「はいはーい」
ベスは、聖歌用のオルガンに手をかけると、軽々持ち上げて動かした。絨毯を捲ると、小さな鍵穴のついた、色の違う床板が見えた。アンリが鍵を差し込むと床板が外れ、人ひとりやっと通れそうな階段が現れた。
「いってらっしゃいませ」
ヴィリアは会釈だけすると、階段を降りていった。
ひやりとした空気の充満した石の洞窟を進み、突き当たった鉄の門扉を押し開けると、大理石の石畳が内装された小部屋に辿り着いた。そこには、翡翠色の目をした年端も行かぬ少女が佇んでいた。
「待ってたよ、ヴィリア」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!