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「天国の母上様……聖アンジェリーク教会は今日も平和です」

 箒を手にした小柄な修道女、アンリが、ステンドグラスを仰ぎ見ながら呟いた。それに返したのは、豊満な胸を揺らしながら長椅子を磨く長身の修道女、ベス。

「ただでさえ日曜のミサにも人が集まらなくなったし、こうも毎日暇じゃ体が鈍っちゃうなぁ」

「こうして日々の奉仕に精を出せるのも、教団の方々のお陰だもの。元々私たちが物騒な仕事を引き受ける必要は無いのよ、ベス」

「え〜……アタシは掃除なんかより“狩り”の方が得意なんだけどなぁ」

「嫌だわ、はしたない子」

 舌をぺろりと舐めたベスを、アンリが窘めた。二人が言い合っていると、聖堂の扉が開いた。少女が姿を現す。

「あら、ヴィリアさん」

 ヴィリアは広間をぐるりと見回す。

「礼拝者はいないのね」

「ええ。ミラさんのお部屋、ですか?」

「お願い」

 ヴィリアは首肯した。



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あきゅろす。
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