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 赤い絨毯が続く長い廊下に、靴音が反響する。等間隔に置かれた燭台で揺らめく灯が包み込むこの空間は、とある教会の地下大聖堂へと続く通路。冷え冷えとした暗い道をヴィリアは進み、頑丈な扉の前に行き止まる。

「御足労有り難うございます」

 頭上から声がする。見上げる前に、その男は音も無く降って来た。白と黒を基調とした装い。まだ微かにあどけなさが残る面立ちで、慇懃な物腰の青年。彼の名はオスト。黒条教団所属の“魔女狩り”の一員で、ヴィリアと同じく幹部と呼ばれる階級に属している。

「マザー・リリオールが待ち兼ねておいでです」

 金属の鍵の落ちる音がして、扉が自ずから開き出す。オストは一歩身を引き浅く礼をした。ヴィリアは気にせずするりと中へ入る。扉はまた独りでに動き、腹に響く音をさせながら閉じた。
 ヴィリアは絨毯を辿り歩を進める。一歩、一歩。玉座に腰を据えたる者の許まで。

「御帰り、ヴィリア。愛しきわらわの仔よ」

 玲瓏とした声。君臨者は、細長い煙管を手に紫煙を吐いた。透き通るように白い肢体を幅員の広い天蓋付き椅子に横たえ、長い銀髪を床に流し、金色の瞳でヴィリアに語りかける。

 

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