[1]
『 死せる魂に
永遠の安息を 』
冷たい夜だった。降り注ぐ月光の白がいっそう少女の顔から熱を奪っているようでもあった。風に靡く髪の隙間から覗く精悍な瞳が、空高々に君臨する衛星を映す。少女と、少女の足下に生える草が風にそよぐ音だけが、世界を支配していた。
一瞬の無音。少女は不穏な気配を感じ取った。耳を欹てる。静寂の向こう、微かな息遣い。
「誰?」
少女の凛とした声が飛ぶ。続く声は無い。代わりに、ガチリと重い金属音が遠くで聞こえた。少女は何かを理解したように短く息を吐き、背中に手を延ばす。上半身はニット地、レザーのスカートには不釣り合いな太いベルトが二本巻き付けてある。一方には、合皮の鞘に納めてある短剣。もう一方は鈍色に輝く小銃を吊っていた。
少女は銃を抜き、引き金に指先を添えた。集中。そして徐に、引き金にかけた指先に力を入れた。
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