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 屋敷を目前にした人々は皆、顔を見合わせて目を瞠り感嘆の溜め息を洩らしている。かつてこの地を治めた領主の権力が如何程であったかが、敷居の広大さから見て取れた。
 見上げると首を痛めそうな迫力の門扉が開き、出てきた女性が背筋を伸ばして言う。

「ようこそ。お越しいただき有り難うございます」

「これはこれはアレアロさん、御機嫌よう。本日はお招きいただき光栄の至り」

 先陣を切って、恰幅の良い中年男性が門をくぐる。

「ご招待有り難うございます、ホホホ」

 それから後ろに続いた客は全部で十名。一番後ろにヴィリアの姿があった。

「おや、見ない顔だね。この街の人ではなさそうだ」

 アレアロがヴィリアを興味津々に見つめる。壮年の女性が先に口を開いた。

「その方は旅がてらに此処へ寄ったそうで、何でもアレアロさんとお話しがしたいとか」

「成程、ではお疲れだろう。どうかゆっくりしていってくれ。……名を聞いていいか? 私は此処の家主のアレアロだ」

「ヴィリアです」

「そうか。さぁヴィリア、中へ入るとよい。腕によりをかけた料理を沢山用意しているぞ」

 アレアロはヴィリアの手を取って奥の広間に促した。

 長いテーブルに純白のクロス、天井にはシャンデリア。所狭しと並んだ料理の数々に客人達は溢れる生唾を飲み込んだ。各々適当な席に着き、ヴィリアはアレアロの隣りに座る。

「それでは乾杯しよう」

 アレアロがグラスを手に立ち上がる。

「皆も御存知の様に、私は“人喰い”と呼ばれる一族の血を引いている。だがこの通り牛や鳥や野菜を食べて、人間と同じ生活をしている。それを可能にしたのが、この街の者達の寛大な心だと私は思っている。皆に感謝したい。今日は存分に楽しんでいってくれ。……乾杯!」

「乾杯!」


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あきゅろす。
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