卒業
3
「だって、お前。北高行くって言ってたじゃん。…だから、俺…。」
「そうなんだけどさ、試しに受けてみたら受かっちゃって。」
「は?ってか、高校の事、なんであいつが知ってて俺が知らないんだよ。」
「いや〜。なんか恥ずかしくてさ。」
俺が怒りを隠せずに発した言葉にも、望は笑いながら、ごまかすような口調で答える。
「お前…ほんっとに馬鹿。大馬鹿野郎だよ。」
「えー。結構良いとこ受かったんだけどなー。」
「そういうことじゃねーよ。だから馬鹿だって言ってんだよ。」
望はずっとへらへらと笑い続けている。
そんな望を無視し、俺は歩き続ける自分の靴を見つめながら考えた。
そして、決心して言う。
「…俺も、そこ受ける。」
「でも、もう入試終わったよ?」
「じゃあ来年受ける。」
「北高はどうするんだよ。受かってたんだろ?」
「…行かない。」
「なんでだよ、お前。俺がせっかく教えてあげたのにさー。それに、お前もあんなに頑張ってたじゃないか。」
望に泣きつき教えてもらいながら、必死で頑張って勉強をした数ヶ月を思い出す。
「それは…、お前が行くって言うから。お前が行かないなら、何の意味もねーよ。」
その数ヶ月の間、心の中にあったのは、望と同じ高校に行くということだけ。
それだけが俺を動かしていたようなものだった。
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