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卒業

「はは。意外と冷めてるんだな。尚人は結構泣く方だと思ったんだけどな。」


俺達は数人の後輩に声をかけられながら、騒がしい3年の廊下を抜けた。

期待していた訳ではないが、所詮俺には告白なんてなかった。


「なんだよ。そんなんで泣くかよ。どうせ卒業しても、お前とは一緒の高校だしな。ホント、腐れ縁だよなー。」


望との思い出を頭に浮かべ、ニヤリと笑いかけた。

望も笑い返してくれるだろうと思ったのに、一瞬見えた顔は暗かった。


「あ。…その事なんだけど…。」


そう望が言いかけた時、丁度職員室のある階に差し掛かり、望と同じクラスの笹倉とすれ違う。


「おー!!篠原。お前、東京行っても頑張れよ。」


笹倉は片手を上げ、望に呼び掛けると、颯爽と階段を駆け上っていった。


「…おお。ありがとな。」


望もためらいがちに、そう答えるだけだったが、俺にはどうしても引っ掛かる言葉があった。



「……東京?それ、どういうことだよ。」



笑い返してくれない望。
一瞬見えた暗い顔。
そして、言おうとしていた言葉。

俺は笹倉の言った言葉の意味が理解できず、というか理解したくなかったのかもしれないが、望に尋ねた。

望は、まだ靴が多く残っている靴箱辺りまで来てやっと、何ともなさ気に答えた。



「俺、東京の高校行くんだ。」





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