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SSS-log
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※花主には花主なんですが主がいつもの主とはタイプが違います。
・基本的に何をやらせても駄目
・だけど絵が上手。画家並。
・陽介がヤリチン(すいません
・だけど軽いとかそういうわけでは無い(恋愛とセックスを別物として捉えてる

これくらいのポイント押さえておけばおっけかなと思います。
試験的に書いてみたかったものです。名前は途中で勝手に出てきます。

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ふと指先に何かが当たった。当たったものを確認しようと視線を落としてみれば、そこには大きなスケッチブックが一冊。
(H.O)
表紙の右下の辺りに書かれたイニシャル。一体誰のものかと思案を巡らせて見れば心当たりの人物にすぐにたどり着いた。
(おとなし、はるか…)
そう言えばいつも、傍らにはこの大きなスケッチブックを抱えていたような気がする。表紙の角がボロボロになっていて、どれだけ使い込まれているのかが良く分かる。
アイツの描く絵は個人的にも好きな画風で、そして贔屓目を差し引いて更に素人目で見ても素晴らしいものだと一目で分かるくらいのレベルの絵だった。
これほど使い込まれたスケッチブックには一体どんな絵が描かれているのか。期待してしまうのも当然というもので、興奮で胸を一杯にしながら表紙を捲った。


「うわ、すげ…」
素直な感想が思わず声に出てしまっていた。ラフ画、というんだったか。鉛筆の黒一色のみで描かれた、力強い絵。何度か完成された絵を見せて貰ったことがあったが、こういう絵を見るのはこれが初めてだ。

1枚目は稲羽の商店街の風景。
2枚目は学校の屋上からの風景。
3枚目になると、風景に合わせて人物も描かれるようになっていた。

ぱらぱらと、普通のノートよりも幾分厚いページを捲っていくと、いつの間にか風景は描かれることが無くなって、代わりに見慣れた人物達の絵で一杯になっていた。
里中だったり、天城だったり、クマや完二、それからりせに直斗。その楽しげな絵の中には、勿論俺も居た。
(良く見てるもんだ)
そこに描かれていたのは他愛も無い日常のほんのひとかけら。みんなで楽しそうに笑っている場面はもちろん、軽い口喧嘩をしている場面やそれから昼食を取っている場面、一緒に勉強している場面なんかもあった。
普通の人ならば簡単に素通りしてしまうような、そんな一場面。なんでもないようなひと時ひと時をこいつがどれほど大事に過ごしているのか、それを感じられるような絵だった。


(……、?あれ?)
何枚目かの絵に入った辺りから妙な違和感を感じた。
(…俺ばっか)
見間違いでもなければ自惚れでも無い。スケッチブックのちょうど真ん中辺りから、描かれる人物が特定の一人のみになっている。若干美化されて描かれているように見えたが、紛れもなく、俺だった。
(まぁ…一緒に居る時間も長いしな)
多分、アイツが一番顔を見る機会の多い人間が「俺」という人物。一番良く見ているから、自然とモデルになることが増えたとかその程度の理由だろう。
あまり、深く考えてはいけない。…期待してもいけない。


ぼんやりした顔、怒った顔、眠そうな顔。果てには泣きそうな顔まである。
(アイツの目に、俺はこんな風に映ってるんだな)
なんて、そんなことを考えながらページを捲って行くと、「満面の笑みを浮かべている俺」が顔を覗かせた。どうやらこの絵が今現在描かれている最後の絵のようで、その後のページはまっさらだった。

(やっぱアイツ、すげーよ)
成績は美術以外は下の方。運動はまるでだめ。裁縫をやらせれば手は穴だらけになるし、料理をすればどんな材料も魚の餌になる。とにかく何をやらせてもダメなのだ。
ぱっと見余りよろしくない評価、それら全てを覆してしまうのがコイツの絵の才能。たくさんの人間の中でもほんの一握りにしか与えられない、本物の"才能"と言うものなのだろう。



笑顔の絵の、隅の隅の方。
強弱の付いた曲線に混じって、何か文字が書いてあるのをふと発見した。まじまじと、注意深く眺めていなければ見つけられない程の小さな文字だった。

"大好き"

まるでアイツみたいな遠慮がちな小さな文字。だけど、はっきりと読み取れた。





不意に、がらりとドアが開く。
誰が来たのだろう、そう思ってドアの方に視線をやると、夕日を背負った音無がこちらを見つめて立っていた。
「あ、」
俺の手にしたスケッチブックに気が付くと同時にさっと顔色が変わったと思うと、すたすたと足早に近付いてくる。そしてそのままの勢いで、乱暴な動きで俺からスケッチブックを奪い取った。普段は余り見られない珍しい一面だ。


「み、見た?」
「見た」


音無の顔がカーッと赤く染まっていくなっていく。『文字を見た』とはっきり言ったわけでもないのにこの反応。隠し事、下手くそだな。

「そういうんじゃ、無いから」

スケッチブックを大事そうに両手で抱えながら、じりじりと後ずさっていく。そのままドアの外まで出ると、まるで俺から逃げるみたいにしてばたばたと走り去ってしまった。

「はは、」

『そういうんじゃない』と言うのなら、あの文字に一体どんな気持ちが籠められていると言うのか。友愛の"大好き"?笑わせる。

「あー…、」



(犯してやりたい)

俺がアイツに対してこんな汚い感情を抱いていると知っても、アイツは俺のことを"大好き"と言えるのだろうか。

(怖いから、言わないけれど)




収納場所が無いので、とりあえずここに。

(08.11.21)

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あきゅろす。
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