記憶の欠片
強 引 *
「これ、です」
高杉に帳簿を渡すと、刀を鞘に収めて私の腕を握った。
「来い」
「嫌っ」
「記憶が戻った途端毛嫌いか?」
舌打ちをした高杉が、私を強く壁に押し付ける。
息が、止まりかけた。
「んぅ…っ!」
唇が押し付けられ、舌が入り込み嬲られる。
着物の裾へ手が忍び込み、簡単に下着に触れた。
「やめっ!」
びくともしない高杉の指が、私の秘部に入り込む。
「濡れてるじゃねーか」
強引な愛撫にも、馴らされてしまった身体は素直に反応してしまっている。
「やっ…!だめ……っ」
駄目だと言葉で言っていても、身体は開く一方で。
高杉の猛っているモノをすんなり受け入れていた。
「千咲」
「晋、助…」
高杉の首に手を回し、より深くを求める。
机の上に乗せた私に、腰を突き立てる高杉。
「土方が知ったらさぞかし悲しむだろうなァ」
「え……」
高杉の言葉に愕然としたが再奥を突かれる衝動に私は理性が飛ぶ。
声を上げて果てた。
ガチャ。
ドアが開く音。
繋がったままの、高杉と私……
「あ、す、すみませんッス!」
また子さんが顔を真っ赤にしてドアを閉めた。
くくっと高杉が己を抜きながら笑う。
「おまえ、その身体で土方んとこ戻れんのか?」
記憶が戻った今、してしまったことの重大さに私は青褪める。
何度となく、高杉に抱かれ、乞うただろう。
記憶がなかったとはいえ土方さんのことを忘れていたという事実。
「……晋助」
足を投げ出したままの私に触れようとはせず、視線だけを向けた。
「私、どうしたらいい?」
「てめェで考えろ」
高杉はドアを開けて出て行った。
独り其処に残された私は、高杉が中に放った液体に身震いし、止め処なく溢れる涙も拭うことができない。
地鳴りの音が響く。
起動したのか。
パスワード、合ってたんだ…
もう、私は用なしだ。
高杉が私を匿っていた理由。
"パスワードを知っている人間"
だったから。
"愛してる"と言っていた言葉も、全部嘘。
どの位時間が経ったのだろう?
涙も乾き、私は机から降りると、椅子に座って呆然としていた。
ドアが開き、名前を呼ばれる。
「千咲?」
真っ先に思い浮かんだ顔が、高杉だなんて。
口が裂けても言えない。
「……土方さん」
「千咲…!」
駆け寄ってきた土方さんに抱き締められる。
「ゴメンナサイ…」
汚い身体で。
「ゴメンナサイ……」
私は、貴方には戻れない。
寄せられる唇から避けようとしたが間に合わず、口付けをされた。
懐かしくて、胸が締め付けられる。
「なんで、此処が分かったんですか?」
「電話があった」
高杉だ。たぶん。
事務所を出ると、太陽が西に傾き始めていた。
土方さんが貸してくれた制服を羽織り、私は空を見上げる。
"千咲"
高杉の声が聞こえた気がした。
「晋助…」
思わず呟いた私の目から涙が落ちる。
前を歩いていた土方さんに気付かれていないことを祈り、私は涙を拭いた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!