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それを見たレイは少しだけ眉をひそめる。
「珍しいな…貴様が素直に頷くなど」
「っ、そう…ですか?」
――まずい。
ここで変な態度をとったら、勘の良い彼にはばれてしまうかもしれない。
その危険を感じた架恋は平静を装うとした。
だがふと視線を上げると、そこにある冷たい瞳が自分を見下ろしていて、ついびくりと肩を揺らしてしまった。
「……架恋」
「はっ、はい」
何を言われるのだろうと身体を硬くして身構えていると、頭の上に何かの感触を感じた。
「……え?」
それがレイの手だと理解するまで、時間がかかった。
レイは大きな手の平で架恋の頭を数回撫で、それから何も言わずに部屋を出ていってしまった。
拍子抜けした架恋はレイに触れられた頭にそっと触れ、内から沸き起こるよく分からない感情に首を傾げた。
レイの行動の意図も架恋には理解出来ず、ますます彼のことが分からなくなった。
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