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「そういえば、明日ですね」
突然、フェイがそんなことを言った。
「何かあるんですか?」
架恋は思い当たる節がないので、首を傾げてみせる。
するとフェイはにこりと微笑んだ。
「以前お話した、三世界の支配者の方が来席しての協定の儀がある日ですよ」
――協定の義…?
「それって、確か……」
「はい。それぞれの世界の領土を侵さず、その世界の秩序を決して壊さないという誓いを、三世界を統べる方達が結ぶ儀式のことです」
「じゃあ…たくさんの人が来るんですね」
「そうですね。何せ、歴史に残る程の儀式ですから。三日がかりで行われるのですよ」
「三日も、ですか」
「はい。一日目にこの城で前夜祭パーティーが開かれ、二日目に儀式をし、三日目には世界中で祝いの祭りが開かれます。本当に賑やかな三日間になると思いますよ」
微笑みながらそう話すフェイを見て、架恋は目を伏せた。
その表情はどこか寂しそうで。
架恋のその様子に気付いたフェイは、戸惑いの表情を見せる。
「架恋様…?」
「……私も…」
服の裾をぎゅっと握り、架恋はぽつりと呟いた。
「私も、行きたいな…」
静かに目を伏せたまま、夢物語を言うかの様に呟いた。
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