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「貴女様はレイ様の所有物として、この黒曜城にその身を拘束させていただく事になりました」
フェイのその言葉を、架恋は呆然とした様子で聞いていた。
「レイ、様って…?」
それが、目の前の現実を受けとめれない架恋の口からやっと絞りだした言葉だった。
声は震えている。
体も、震えている。
それは、架恋はどこか頭の隅で分かっていたから。
「レイ様」が誰なのかを。
それはきっと――……
フェイは少し気まずそうに蒼の瞳を下に逸らし、それでも再度架恋の瞳を見て、言った。
「昨夜、架恋様をお抱きになった方です」
「………」
ああ、やっぱり。
私の身体を無理矢理奪ったあの、冷たい眼をもつ男。
彼がした行為は、架恋の心に生涯残るであろうほどのものだった。
そんな男の傍になんて、いたくもない。
ましてや、ここが異世界だという事が本当かも分からないのに、この場所に拘束と言われて「はい分かりました」なんて言えるわけない。
「……あの人の傍になんていたくありません。絶対に嫌です」
その意志は強固なものだった。
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