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その声は確かに“彼”のものだった。
「……フェイさん…っ!」
来て、くれた。
驚きと安心の入り交じった瞳で声のした方を見遣る。
だが、そこにいたのは彼であって、彼ではなかった。
ぞくりと、身体が震えた。
「っち、誰だ!?」
茶髪の男が明らかに動揺した声で叫ぶ。
だがフェイはそれに答えることはなく、蒼の瞳を鋭く細めた。
「――架恋様から、離れろ」
あの優しいフェイのものとは思えない程に冷たい声。
殺気を含んだかの様な声色に、架恋は僅かな恐怖を覚えた。
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