4
ふと、残してきてしまったフェイのことが気になった。
自分のために今回の計画を作ってくれた彼に、これ以上迷惑はかけられない。架恋はそう思っていた。
だから逃げようなんて思わないことにしていた。
それなのに、いざチャンスが来ると逃げることを選んだ、薄情で自分勝手な自分がいる。
「……フェイさん…」
彼はきっと、責任をとらされるだろう。
危険を犯してまで外に連れ出してくれた優しい彼の顔が、頭に浮かんだ。
その時、強い風が吹き抜け、架恋の髪を揺らした。
火照った身体が、一気に冷める。
「…私……」
段々と冷静を取り戻した頭が事態の深刻さに気付き始めた。
自分は一体、何をしているのだろう。
彼に迷惑がかかることなんて構わず逃げるのだろうか。
……何処へ、逃げるというのか。
この世界に自分の知っている場所なんて在りはしないのに。
そう思った時、大きな孤独感に苛まれた。
感情的だった自分の行動に、今更になって後悔の念が押し寄せてきた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!