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――綺麗。 

一瞬、架恋は恐怖を忘れて男の妖艶なその容姿に見惚れた。









しかしそれは一瞬の事で、風に揺れる木々の音が鼓膜に届き、現実に戻った架恋にすぐさま恐怖が甦った。

男は架恋にも分かる程、静かな殺気を放っていた。

「いや……」

惨めな命乞いの言葉を吐きそうになるのを、自尊心がぎりぎりのところで抑え、代わりの言葉を吐く。


だが、男は何も言わずに架恋の腕を掴んだ。

「っ、きゃ…!」

無理矢理架恋を立たせ、その反動で架恋はバランスを崩し、不覚にも男の胸に飛び込んでしまった。

「っ…!!」

咄嗟に逃げようとするが、背中に腕を回され、動きを封じられてしまった。

目の前に、美麗に整った顔がある。




――怖い……!!


その想いが脳を支配し、架恋は必死に抵抗した。

だがそれはまるで意味を成さず、ただ男の腕の中でもがくだけになった。


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