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炎症性のアルカディア
第一楽章
あの子はね、自分のことを木か花か何かだとでも思い込んでるのよ。
物言わず、誰にも気にも止められず、ただそこにいるだけ。

ガリガリに痩せ細っているというのに、食事を勧めたって目線どころか眉ひとつ動かさないのよ!可愛げがどうとかいう問題はとうに過ぎたね!
人間ああなってしまうと生きてるか死んでるのかわかりゃあしない。むしろあの子が死んでいたとしても、私はいっさい驚かないよ。



わたしは、わたしはーーー



*****


わたしは森の中にいた。
森の中の小さな小屋。私はずっとここにいた。
暗く、狭く、何もない。誰もわたしを訪ねず、誰もわたしを知らない場所。
いつからここにいるのだろう。わたしは何のためにここにいるのだろう。





〜〜♪
最初に気づいたのは、音だった。

いつからか、何もない空間に音が鳴り響くようになった。
――これは、歌。明るい歌も、綺麗な歌も、悲しい歌も、それは何かを訴えかけるようにわたしの中に入っていく。


わたしも、わたしも歌いたい。
「……ぁ…っ」
しばらく声を出していなかったわたしの声帯は何も答えてはくれない。しかし、衝動に押し流されるように、わたしは声を出し続けた。

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あきゅろす。
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