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実卓TRPG セルフ二次創作
ハートの形状@(黒の少年:碧涼)※後天性女体化
「あれ、癸さんはまだ来ていないのかな」

珍しいこともあるものだな、と担任が呟く。癸で止まった出席確認で教室内がザワ と沸いた。
確かにいつも一番最初に教室に来ている涼がいないのはおかしいと感じていた。生徒会の用事かなにかだろうと見過ごしていたが、違うらしい。
まさか学校にも連絡が入っていないなんて。

「センセー。電話しても繋がんないのー」
声を上げたのは飯塚だ。生徒会の繋がりもあり、自分が知る限り一番涼と親しくしているのが彼だ。しかしどうやら彼のところにも連絡は入っていないらしい。

「会長、前にも一度倒れたらしいし、ヤバイんじゃない?」
「病気とか?」
「何かいつも忙しそうにしてるしね」
「そうそう。下手に手伝おうとしたら睨まれちゃうし」
「いっつも澄ました顔しててさ、何か近寄りがたいんだよねぇ」
そんな生徒たちのざわつきの中、`み′で止まっていた点呼は間もなく終わった。

「あー、わかる。『氷の女王』って感じ」
「女王?」
何となく耳に入っただけの単語だった。

「あ、宝王くん聞いてたの。癸さんに超似合ってない?氷の女王!」
若干小馬鹿にしたような響きに、胸がチリと不快に鳴った。
「……癸は男だろ?女王というよりは――」
ドッと場が弾けた。目の前の女子たち以外も笑っている。
「もう、宝王くんもそんな冗談言うんだね。確かに愛想はないしスレンダーだけど、癸さんだって女の子だよ」


「みずのと、りょう。って、男みたいな名前だけどね」




思い起こしてみると、担任も確かに点呼の際『みずのと りょう』『癸さん』と呼んだ。
飯塚も今現在「りょーちゃんから返事が来ないー」と騒いでいる。

おかしい。おかしい。絶対に変だ。
だって確かに涼は……すずみは――

おかしいのは、俺の方なのか?



昼休み前の最後の授業。授業担当だった担当から、癸涼の家族から体調不良のため休ませるとの連絡があったと伝えられた。
俺はそれを聞いていてもたってもいられず、その場で学校を早退したいと訴える。俺の顔色があまりにも悪かったのだろう、誰からも止められることがなかったのは幸いだった。


*****


勢いで見舞いに来てみたのはいいが。……いやいいのだろうか、だって今の涼はきっと――。
ブンと頭を振る。そんなはずがあるわけがない。それを確かめるためにもここで行動を起こさなければいけないのだ。
大きく息を吸い込んで、チャイムを鳴らした。

門の側方に ガランガラン と豪奢な音が響くの確認し息を吐く。
ここにこうして見舞いに来るのは2度目だ。

あの時もそれなりに緊張していたが、資料を届けるという大義名分があった。自分の意思のみでここに来た今は、その比ではない。第一状況も違い過ぎる。もしも本当に涼が……だとしたら、親御さんもすんなりと家に上げてくれるとは限らないのだ。きっと、この門すら通ることはできない。


考えれば考えるほどマイナスに向かっていく思考に勝手に怖気付きながら待つ。自然と視線が足元を向いていくのを自覚しながらしばらく立ち尽くしていると、家の方から女性の声が届いた。
「あらぁ! まぁまぁまぁ、宝王くんなのね!」
その声に弾かれたように視線を向けると、記憶の中と寸分違わない涼の母親の姿が見える。
返事のない俺を不審がるでもなく、おばさんはこちらに駆け寄って来る。俺と涼を隔てる壁だったそれは彼女の手によってあっけなく開かれた。

「りょうちゃんのお見舞いに来てくれたのね! どうぞ上がって上がって」
「え……」
あまりにすんなりと許可が下りたことに呆然とする。

「今回も心配して来てくれたんでしょう? りょうちゃんったら私も部屋に入れてくれないのよ。私、お母さんなのによ?」
「でもきっと宝王くんなら大丈夫ね! 引っ張り出してあげて頂戴」

「いえ、その……」

勢いに圧され、気づいた頃には俺は涼の部屋の前に立っていた。


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