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何故彼だけ、練習を抜け出してもいいのか分からない

無駄にでかい校舎の中庭を通り過ぎ、人は居なく暗くなっていく

腕を引かれるわけでもなく、ただ無言で歩いていく哲を追っているだけ


「…ずっと待ってた」


ふいに立ち止まった哲の口から、そう滑り出た言葉

周りには誰も居ないのだから、わたしに向けられた言葉なのだと、時間をかけて解釈した


『待ってたって、何…?』


―――ずっと、気になってたんだ


「雪乃のことだから、オレがここに行くこと、嫌だったんじゃないかって

きっと、この学校のこと理解してないだろうから」


真剣な表情で口を開いた哲

でも、なんか引っかかる


『理解してない、って…なに

哲の言うとおり、わたしは…哲がここに行くこと嫌だった

理解してないの、哲のほうじゃないの?!

わたしのこと、…何も分かってない!』


言いたいことだけ言って、逃げてるような気もした

哲が何か言ったような気もしたけど

わたしの足は止まらなかった





ここで逃げたってしょうがないことは分かっていた

わたしだって、哲の言い分くらい聞いてあげたっていいと思う


何を、伝えたいの?


寮の扉を開き、靴を放るように脱いで、床に鞄を放って

ベッドに倒れこむ


今日で、この学校は二日目で

はっきり言って、大きすぎる校舎も、制服も慣れない


きっと、慣れるとは思う

この環境、きっと慣れれば楽で、大切なものになるんだろう


でも、分からない

分かんないんだよ、哲








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あきゅろす。
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