切れる、歪む
《切れる、歪む》
グラウンドに近づくにつれて
―――空気が変わっていく
ピリピリ、キリキリ
いつもなら、部活動に励む生徒の声で溢れているはずなのに
「‥な?」
飛鳥くんが指差す先には、ゴールの前で構える
守ではない人影だった
―――わたしが一番見覚えのある
決してがっちりとはしていない、キーパーには不向きの体系をした人
『‥赤城太陽』
「知ってんのか?
(赤城って‥)」
わたしの存在に気付かないまま、彼に向かって
雷門サッカー部員達のボールが飛ぶ
でも
ピキッと何かが切れるような音がした途端、周り、空間が捩れるような感覚に陥る
ぐらぐらと歪む視界に、気持ち悪くなったのか
わたしを抱いたまま飛鳥くんは地面に倒れこんだ
この感覚は知っている
―――赤城太陽、
わたしの兄の必殺技、『カット・ザ・ワールド』だ
わたしは見慣れているからいいものの、初めてだったであろう飛鳥くんや
サッカー部のみんなには
―――相当、ダメージは大きかったようだった
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