釣鐘草
雨が降る
その中を傘を差して歩いていると
ふと目に付いた釣鐘の形をした花
揺らすと
チロチロと澄んだ音色を奏でる気がして
そっと摘み取ってみる
─綺麗な音色だね
─だれ、
─ただの通りすがり
蒼い傘を差した少年が微笑んでいた
手には 少女が摘んだものとおなじ花
─釣鐘草の奏でる音色が、雨を呼ぶんだ
─釣鐘草、
─君の持っている、その花の名
少年が手にした花束を振りかざす
響く音色は水琴窟のごとく
─釣鐘草はね、またの名を雨降花というんだ
雨足がいちだんと強くなる
カラコロと釣鐘草が鳴り響く
end
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