Fluorite Lamp
──蛍使い──
浴衣姿の少年がひとり、夜の畦道を歩いていた
下草の細く伸びた葉が足首にあたってくすぐったい
夏の夜の熱気に響く煩いくらいの蛙の歌声
それらに耳を澄ましていると、ふいに遠くからさらさらと水の音がした
─甘い水はいらないかい、
少年はそう囁くと、薄く微笑んで、手に持っていたランプを顔の前に掲げた
そのランプには石油の代わりに、澄んだ無色の蛍石がひとつ入っていた
すると、小川の方から黄緑色にゆっくり点滅する光がすうっと飛んできて、ランプの中に収まった
やがて、ランプが4、5匹のホタルで満たされると少年は満足そうに微笑んだ
─フローライト・ランプの完成だ
ランプからは翠色の光が溢れだし、少年の顔を淡く照らしだす
無色の蛍石は、ほんのり碧色に染まりはじめた──
end
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