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五万打!
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「真雪おねーちゃん、大丈夫?」

楽しみながらも一応雪ちゃんの心配をしていると、風璃ちゃんが俺の陰から覗いて首を傾けた。雪ちゃんの心配をする風璃ちゃん可愛い。いい子。
雪ちゃんはそんな風璃ちゃんを見て、一瞬だけ俺の方に視線をやってから、首を縦に振った。

「多分大丈夫多分」

とても大丈夫だとは思えなかった。
多分で挟むな。大丈夫じゃないって言うより大丈夫じゃなさそうだから。

「ほんと?保健室行く?」

風璃ちゃんもそう思ったのか、控えめにだが食い下がる。
でも風璃ちゃん、いくら一般開放の文化祭とはいえ、高校生女子が来たら保険の先生も困ると思うよ。しかも、子供怖いみたいな理由で。

「保険医攻めとかおいし…」
「はい風璃ちゃん聞いちゃダメだよー。雪ちゃんは大丈夫だからねー」

雪ちゃんの台詞を遮って反対側を向くと、同じタイミングで嵐ちゃんが風璃ちゃんの耳を塞いでいた。ナイス嵐ちゃん。
ていうかこんなときでも雪ちゃんか。いや、もしかしたら正気を保つ方法とかなのかもしれないけども。

「晴生くんも秋嵐くんも、酷い」
「酷いのは雪ちゃんです」
「俺の妹に変なこと教えんな」

わりと必死な嵐ちゃんだった。
まぁ妹が雪ちゃんみたいな子になったら困るよなぁ。特に嵐ちゃんの場合、本当に霧緒さんっていう野郎…男性と付き合ってるわけだし。俺みたいに雪ちゃんに絶対を置いているわけじゃないし。

「秋嵐おにーちゃん、どうしたの?」
「なんでもない」
「うにゅ」

………どうしよう可愛い。
風璃ちゃんの耳を塞いでいた手を外した嵐ちゃんは、誤魔化すようにその手を風璃ちゃんの頬に持って行って軽く挟んだ。それに応じて柔らかい頬を寄せる風璃ちゃん。
ああ、もしかして、これが萌えってやつなのか。

「微妙に違う気もするけど、確かに破壊力はすさまじいものを感じるね」

雪ちゃんに言うと、そんな返事が返ってきた。子供苦手な雪ちゃんでも可愛いと思うくらい、可愛い光景だった。まわりの人とかも見て悶えてるしね!如何せん二人とも可愛い顔だからね!

「あっ!」

ほわほわしい気分で二人を眺めていると、不意に風璃ちゃんから小さな声があがった。何かと思って三人揃って風璃ちゃんを覗き込めば、少し焦ったような風璃ちゃんは言う。

「体育館で合唱が始まっちゃう!」

あ。
大きく目を見開いている風璃ちゃんを見ながらプログラムを思い返せば、そういえば風璃ちゃんは午後から合唱が入っていたんだった。

俺たちは一瞬だけ顔を見合わせて、

「急げ!」

風璃ちゃんを抱えて走った。

廊下は走っちゃいけません。

そんなルールを高校生である俺たちは思い切り忘れて、きゃーっと嬉しそうな風璃ちゃんを腕の中に――小学校の先生に怒られたのだった。


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