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五万打!
7

「もう授業中だぞ」
「あれー?新会計くんじゃん。なになに、秘密の逢瀬?」

別の意味でヤバい!!

なんでよりにもよって、諫早と風見がこんなとこに居るの!

「うわー、見つかっちゃいましたか。すみませんでしたー」

お怒り気味な諫早を見た朝宮は即座に謝って、逃走した。逃げ足の速いのなんのって。今まで初対面だと思っているだろう相手をナンパしてた野郎とは思えないんだけど。

しかし…うん。俺も見習って逃げた方が賢明そうだ。

「すんませんっしたー」
「どこに行く気だ」

…ナチュラルに裏門から出る作戦、失敗。
しかもこの声は、無視して逃げるわけにはいかない感じの声だよね。真面目な風紀委員長の声だもん。もし逃げたら追いかけて来て風紀室に連行されかねない感じの。

「もう授業は始まってるぞ」

恐る恐る振り向いた先には、厳しい顔をした諫早と、愉快そうに笑っている風見。…風紀怖い。

「いやあの、俺、ちょっと忘れ物しちゃって、寮に帰らないとなんなくて…」
「忘れ物?それなら昼休みの間に行けばよかっただろう。授業時間にまで行くものじゃない。きちんと先生に忘れたと謝って、授業を受けるべきだ」
「お父さーん!」
「…お父さん………?」

あ。

つい言うことがお父さんみたいで言っちゃったよ!いつもなら副会長モードだから我慢できてるのに、思いっきり声に出しちゃってたよね俺!モノローグじゃなかったですよね!
やべー…諫早めっちゃ見てるじゃん…。

「あう、えっと…諫早、委員長ってば言うことがお父さんみたいだから、つい………あは」

誤魔化すのも苦しくなりそうなので本当のことを言うと、諫早は珍しく固まって…隣の風見が爆笑した。ごめん、諫早。

「あっははははは!!」
「…風見」
「だって委員長、お父さんって…!ぴったりすぎる!」

ああああ……。赤くなる諫早に申し訳なさが込み上げてくる。風見もうやめたげて!

「ごごごごごごめんなさい!悪気はないんです!」
「いや、いい……わかってる」

許してくれるんだ!?違反者でいきなり失礼なこと言う奴、俺なら絶対怒るよ!?
諫早が良い人すぎて辛いんだけど。

「あっはっは!」
「つーかいつまで笑ってんの風見…副委員長も!」

いつまでもアホみたいに笑っている風見を指差して言うと、笑い声は余計に増す。しかしコレ、もう諫早のことで笑っているのとは違うようだ。え、俺を笑ってんの?

「何」

なんで俺が笑われなきゃいけないんだという意味を込めて睨むと風見は笑い声を止めずに言った。

「だってキミ、天崎の副会長くんに声が似てて…副会長くんが言ってるみたいでおっかしーんだもん…!」
「っ!!」

失敗―!!
そうだよ、声はどうしても変えようがないんだから、あんまり喋っちゃダメじゃん俺!一応喋り方も違うしテンションとかも違うから気付かれてはいないみたいだけど…。
心臓に悪い。これは早く逃げるに限る。でも…

「ねー、副会長くんの真似してみて?」
「風見、授業に戻らせるのが先だ」

パニックでどうしようもならなくなった時だった。

「委員長、副委員長。何してるんですか?」

救世主が現れた。


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