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理由をつけて早くここから出ようとすると、背後から声がかかりドキリとする。振り向けば面倒臭そうな顔をした芦屋。

「芦屋先生。どうされたのですか?」
「別に、早く終わっただけだっつの」

その顔は天崎に向けられ、するりと愉快そうなものに変化して続けられる。

「つかなんでお前半裸で一条と話してんだよ?」

にやりと笑ってこちらに視線を向けた芦屋に、言葉に詰まる。こいつ、わかってやってやがる…!しかも厄介なことに、

「あ…申し訳ありません。見苦しい格好で…」

こっちはわかってねぇんだよ…。

「いや…。…それより芦屋、会長から書類」

これはもう早く出るしかないと思い書類を渡せば、芦屋の顔が余計に嫌らしいものにかわった。

「まぁすぐ処理するからここで待ってろよ。許可申請だから、返さないとならないしなぁ?」

本気でこいつは、とても教師とは思えない。
完璧に楽しんでいるのを睨めば更に愉快そうに笑う。
…仕方ない。ここで慌ててしまっては芦屋の思うツボだ。黙ってやり過ごすとする。
だいたい天崎が着替えていようと俺にはなんの関係もないのだ。顔は確かにいいが、ああいう従順なだけでつまらない性格の奴はタイプじゃねぇし。ただちょっと、普段がきっちりしすぎているから驚いただけだ。

「つか、天崎は早く着替えたら?しゅ…峰藤待たせてるんだろ」
「っ…」

このやろう!!

「はい。でも…失礼ですし」
「は?あー、一条?別にいいよな、一条?」
「………」

わかっていてやっているこいつは、本気で性格が悪いと思う。

「第一、その中途半端な格好の方が事前とか事後みたいで…」
「俺には関係ねぇから勝手に着替えろ!」

思わず声を荒げると天崎は疑問符をうかべながらも着替えを再開する。芦屋が「これは他の奴にもやってみたいな」などとふざけたことを言ってるのは無視だ。

「………」

さっきから気になる衣擦れの音も、無視だ。うん、これは一般生徒が他で着替えろといった意味がよくわかる。

「あ」

机の角を無心で見ながら芦屋を待っていると、小さく声があがった。今度はなんだ…!

「どした」
「あ、いえ。ジャージの上着を忘れたみたいで」

そう芦屋に答える天崎は半袖の体育着だった。着替え終わっていたことに安心する。もうこれでからかわれることもねーだろう。息を吐いて、もうそろそろジャージなんかなくても大丈夫だろうと意見しようとしたときだった。

「そんな天崎くんのために」

ドアが勢いよく開いた。


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あきゅろす。
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