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面倒くせぇ。

生徒会引き継ぎまであと一週間。俺は来る創立祭の準備で忙しい現会長のパシりをしながら、そんなことを思っていた。
つーか昼休みにいきなり呼び出して教師への遣い頼むとか、本気であの会長は勝手というか、他人を使うのに容赦がない。しかし会長候補という立場上逆らえない俺は、仕方なく風紀委員会顧問である芦屋教師のいる化学準備室を目指していた。この手のパシりは既に何度かさせられているのだが、芦屋はよほど職員室が嫌いなのか、ほとんどの化学準備室に籠っているのだ。
だから俺は、芦屋を訪ねて、化学準備室に行った。
そして、あのどこか飄々とした教師の弱味でも握れたらおもしろいなんて軽い考えでノックもせずに、その扉を開けたのだった。

「あ」
「なっ…」

後悔した。

「天崎っ…!?」

そこにはいつものきっちり締めたネクタイを外し、今にもカッターシャツを脱ごうとしている、天崎副会長候補が居た。

「な、おまっ、え…」

一気に頭に様々なことが巡る。
こいつ、芦屋とできてたのか!?しかも優等生で知られる天崎が、学校で…つかこいつと芦屋だとどっちがタチなんだよ!?

「あ、あの…」

つーか、こいつ細すぎだろ…。色も白いし、傷ひとつついたことの無さそうな身体だ。や、でも近くで見ると意外と筋肉がないわけでは…って、近く?

「っ!!っい゛…」
「だ、大丈夫ですか!?」

思考に耽っているうちに予想外の近さに来ていた天崎に、思わず後ずさった。そして後頭部を壁にぶつけた…。

「大丈夫だ…」

しかし、それで少し冷静になって気付く。

「芦屋は…」

芦屋が居ない。そう広くはない部屋を見渡しても、この部屋には天崎一人だ。一人で、制服を脱いでいる。…。

「芦屋先生は今日は昼の会議があるそうなので、昼休み中は帰って来られないと思いますよ?」

…こっちだと思ったら、今度は職員室の方かよ…!
というか、しかし…。

「お前はなんでここに居る?」

しかも、そんな格好で。
その言葉は口には出さずに言えば、天崎は今気付いたように自分を見て苦笑した。

「次は体育でしょう?」

なんて、言いながら。
その手元には体育着があり、そういえばと思い出す。体育は全クラスが同時にやり、俺も次は同じく体育なのだが。

「なんでここで着替えてんだよ」

体育のときはクラスごとに与えられた更衣室で着替えるようになっている。それなのに何かあったのかと問えば、天崎は軽く目を逸らして苦笑の色を濃くした。

「一年の頃…クラスの方々に、天崎くんは同じ部屋で着替えないで、と言われまして」
「…ああ」

そういうことか…。
確かに普段きっちりしている分、こいつの着替えは目に毒すぎる。一般生徒にも、…俺にも。

「まぁ、あれだ、芦屋が居ないなら俺は行くから」
「僕なら居るけど」


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