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3

高校に入ってから私は頑張った。
学校内の人間関係の情報をかき集め、暗記し、それを利用して風紀に入り、委員長たちと肩を並べるくらいの重要なポジションに立った。
全部晴生くんのために。…いや、ほんのちょっとくらい、趣味も入ってる、かな?ちょっとだけだよ?

ともかく私は晴生くんのためにできるだけのことはやったし、晴生くんのためならなんだってする。

私は多分、晴生くんが好きなんだと思う。

恋愛感情とは違う。友情、でもない。親愛でもないし。
この感情をなんと言っていいのかはいまいちわからないんだけど、まぁ真雪ちゃんは晴生くんが大好きなのだ。
だから晴生くんには何があっても幸せになってほしい。


いつだったか、表面上付き合っていたときに晴生くんに言われた言葉がある。

「俺は好きだよ、雪ちゃんのこと」

前後にどんな話をしていたかは覚えてない。晴生くんはよく好きとか言ってくるし、普段はそんなに気にしていなかったのだけど。
言い方か、タイミングか。
何故かわからないけどそんな言葉がいつまで経っても消えない。

「私も好きだよ、晴生くん」

そのときそう返せたかどうかも覚えてない。うん、多分返せてない。

でも私は晴生くん大好きだ。晴生くんに一途だ。
晴生くんのためならなんだってするし、たとえ晴生くんを傷つけようものなら絶対に許さない。

そんな重い愛が、私と晴生くんの関係。




〜〜〜〜〜〜〜〜

眠たい目を擦りながら化学準備室に向かう昼休み。
目的の部屋から聞こえた怒鳴り声に私は身を潜めた。

「ちょ、離してください触らないでくださいやめてくださいー!!」
「んな拒絶されると傷つくんだが」
「勝手に傷ついててくださいこのセクハラ会長!つーか時雨さん見てないで止めろよ!先生だろ!」

うわーん、なんて嫌がりながら教師と上司に文句を言う晴生くんからは、昔の姿は想像できないよなぁ。思えばあの頃の方がよっぽど王道副会長だった気がする。偽物の笑顔はやっぱり王道副会長らしくないへらっとしたものだったけど。

にしてもおいしい状況。動画撮影しようかな。いやでも、マナーにしてても音出るんだよね、アレ。とすれば、それで今の状況が終わってしまうよりは自分の網膜に焼き付けておいた方がよっぽど有意義か。

晴生くん結構マジで嫌がってるけど、それとこれとは話が別だよね!

「あれ、凍坂?」
「え、雪ちゃん?」
「あ?」

あ。

扉の隙間から覗いていたのが悪かったらしい。否、私が気を付けていなかったのが悪かった。

多分面倒臭くなって部屋を出ようとしたであろう時雨さんと遭遇して、見つかってしまった。

「……うん。気にせず続けて!」
「気になるよ!!」

晴生くんの全力のツッコミはスルーしつつ、ちゃんと注意してないとダメだな。今度は気を付けよう。と反省する今日この頃の私。
である。


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