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*clap serial
苦手

「まぁまぁまぁ!なっちゃん!久しぶりね、いらっしゃい!」
「お邪魔します」

秋吉家の門をくぐった瞬間に聞こえて来たテンションの高い声に、梛月はいつもの如く苦笑した。

いつも思うが、この人は本当に琴見先輩の母親なのだろうか、と。



梛月が琴見の家に泊まるということになったのは、その日の昼休みだった。何の話をしているときだったか、偶々梛月が今夜家に一人だと言って、琴見が「じゃあ俺んち泊まりにくれば」と誘ったのだ。そして梛月はそれに甘え、首を縦に振ったのだ。

最近はあまりないことであったが、中学の頃はよくあったことだったので、特に考えもなく言葉に甘えたのである。
だから琴見の母親とは面識もあったし、琴見の家も慣れたものだったのだが。

「よー梛月。もうちょいで飯できるから、その辺座っといて」
「あ、俺、手伝います」

一瞬感じた居心地の悪さに、梛月は琴見の元に逃げた。

忘れていたが、秋吉家には今、もう一人住人が居るのだった。
リビングのソファに座っている少年を見て、梛月はキッチンへと行き、料理を作っている琴見の傍に寄った。

「何、どうした?」

疑問符を掲げながら味見とばかりに差し出されたものを食べ、ため息を吐く。

「…俺、子供苦手なんですよ」
「お前と一つ違いじゃん」

そういえば、そんなことを言ったのは自分だった。

「子供っつーか、年下が苦手なんです、多分」
「なんだそりゃ」

けらけらと笑う琴見に安心しながら、用意された料理を運ぶ。

咄嗟に言ったことだったが、多分それが一番的確な表現なんだと思った理由に、梛月は気付かない。

リビングで我関せずといわんばかりに、しかし我が物顔で座っている中学生の少年を見て、梛月はなんとなく、不快な気持ちになった。

やはり、苦手だ。

(俺より琴見先輩に近い年下なんて、、、)

「………ん?」





(なんだ、いまの)


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あきゅろす。
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