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*clap serial
おべんとう

「つーわけでさー、今ウチにガキが居んの。もー最悪」

「ガキって、従弟くんは中学三年生なんでしょう?俺と一つしか違わないじゃないですか」

「つーか、ウチの妹と同い年だな」

昼休みの屋上で、琴見は梛月と朝近と三人、琴見の手製弁当を食べながら会話していた。
二人の反論に、琴見は言葉を言葉に詰まりながらも視線を逸らして、少し拗ねたように返す。

「それでも、ガキは苦手なんだよ」

特にあの手の、という言葉は吐き出さなかった。

「ウチの妹は平気なのにか?」

「お前のとこのは、なんかもういろいろ平気じゃん」

「確かに彼女はなんというか、人生を達観してる節がありますよね」

「なのにたまに突然テンション上がるし」

朝近の妹を思い出し苦笑する二人に、自らの妹ながら朝近自身、同意せざるを得なかった。兄である朝近からしても、あの妹はある意味尊敬に値すると思う。なんといっても、不良の自分たちが一緒に居るのを見て、目を輝かせるのだから。

前に一度、不良の兄なんて嫌ではないのかと聞いたことがあったのだが、彼女は「たとえ不良だろうが、同性愛者だろうが、もしお兄ちゃんが本当はどこか遠くの星からやってきた宇宙人で血が繋がってなかったとしても、お兄ちゃんはお兄ちゃんだから」と答えていた。そんな達観した、というか思考のぶっ飛んだ朝近の妹を思い出して、琴見は再び嫌な気持ちになった。

「なんかさ、俺が不良だっつーのが気に入らないらしくて。顔合わせるたびに疎ましそーに見られて、鬱陶しいんだよな、あいつ」

「ああ、居ますよね、そういう人を分類だけで見る奴」

なまじ頭が良い所為で二人よりも多くその目に晒されている梛月は、普段あまり歪めない表情を一瞬だけ苛立たしそうなものに変えた。

不良のくせに勉強してるだとか、頭が良いのに不良なんてだとか、そんなことは何度も言われた。

「…ま、その従弟くんのおかげで俺たちは悲しいパン弁当をやめて、琴見先輩の美味しい手料理にありつけるんですから、ここは感謝しなければならないところなのかもしれませんがね」

すぐに表情を戻してくすりと笑う大人びた後輩に、二人は気付きつつも突っ込むことなく笑う。
そんな距離が心地いいからここに居る、なんて青春臭いことを思うような繊細な人間は、生憎居なかったが。

「つか、言ってくれりゃいつでも作るのに」

「それはとてもありがたいですね」

「んじゃお前は明日から俺の手作り弁当な」

考えることをしていないのではないかというほど早く、当然のように返された言葉に、梛月は思わず目を見開いて、数度瞬きをした。

「え、…マジですか?」

そう呟いた瞬間の大人びた後輩の表情が珍しく子供っぽいものだったと気付いたのは、多分横から二人を見ていた朝近だけだっただろう。

(怖いから言わねーけど)





(「ところで俺の分は?」)
(「うまいとか言わねーから要らないかと思って」)
(「おいしいですついでに作ってください!」)


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あきゅろす。
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