*clap serial
いとこ
大島泰道は、極々普通の、平凡な、中学生男子である。
友達は多い方で、クラスのリーダーではないが人気者ではある。そんな感じの、気のいい少年だ。因みに好きな子も居る。同じクラスの明るくて可愛らしい、しかしどこか達観したようなお姉さん気質の女子だ。
生来彼はたいていの人間には同じように接して生きて来ているのだが、そんな泰道が唯一、気に入らないタイプの人間が居た。
不良、と呼ばれる類の人間である。
そしてその中で代表するのが、高校生の泰道の従兄。
泰道は彼が何より嫌いだった。
「てわけで琴見、明日から泰道君のお弁当もよろしくね」
「…ひとつ言いたいんだけどさ、母さん」
「なに?」
「何が『てわけで』なのか話してないのはわざとなのか?」
「あれ、話したつもりだったんだけど」
「天然なのかわざとなのかによって今後の対応が変わるぞ母さん」
「あらまぁ難しい言葉使っちゃって。なっちゃんの影響かしら」
見るからに軽そうな風体で、髪は茶色く染め、耳には年始のあいさつにはなかったピアスまで付いている。女子の使うようなピンなんかで髪を留めてチャラいイマドキの男子高校生といった風ではあるが、聞くに喧嘩なんかもしているらしい。その上更に通っているのは、近所の偏差値の低い不良校ときたものだ。
(見るからにバカっぽい…。最悪だ)
泰道は、親の三か月の海外赴任のため、家が近いという理由だけでこの従兄の家に預けられることになったのだった。自分を置いて行った両親と、一人で生きられるだけの生活能力のない自分を呪った。
(だいたい母さんはついて行く必要ないだろ、残れよ。バカ夫婦……)
内心でしか舌打ちできないのは、普段の自分がそういうタイプではないからだ。それに、今から三か月この家で生活するのに面倒は起こしたくない。
「ま、弁当くらいは作ってやる。その代わり、俺に関わるなよ、ガキ」
二つしか違わないだろ、とか。
こっちこそ願い下げだ、とか。
言いたいことは山ほどあったが、泰道は笑顔は見せず、小さく首を縦に振った。
(「あ、琴見。ついでになっちゃんにも作って行ってあげたら?」)
(「…母さん、朝近が入ってないのはわざとか?本気で忘れてんのか?」)
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