*clap serial
日常風景
綺麗に染められた茶髪を耳にかけ、赤のピンでとめる少年。耳には控えめな、これまた赤のピアス。
これを見て二年にしてこの県下有数の不良校と悪名高い高校でトップクラスの強さを誇る――秋吉琴見だと思う人間はどれほど居るだろう。
とはいえ秋吉琴見の強さを知る人間自体が元々そう居るわけではないので、彼はほとんど誰から見ても、どこにでも居そうな、軽薄そうな男子だった。
軽薄そう。つまり、
「チャラくなったなー、お前」
まじまじと見つめる金髪の少年は半分笑いながら言う。
校内ではどちらかというと彼の方が有名であろう友人。人呼んで、貧乏くじ、柳井朝近。
因みに昨日居なかったのも窓を割ったと、生徒指導の鬼教師に疑われたためである。容疑は晴らしたらしいが。
「まぁ、無駄に似合ってますけどね」
飄々とした笑みを浮かべている黒髪の少年は小さく肩を竦める。昨日の琴見の様子を思い出すと苦笑が漏れそうになったが、そちらは飲み込んだ。
彼は彼で有名人である。
不良校として名高いこの高校に居ながらにして、全国模試では三桁台の、それも二桁に近い数字を連発する美形、三次梛月。
近所の人や中学の人間、高校関係者にまで、何故あのような高校に行ったのか、と噂される二人の後輩である。
そんなちぐはぐな三人は、各々の弁当を持って屋上でランチタイムを過ごしていた。
「でもやっぱ、それじゃナメられそうだよな。お前ただでさえ童顔なのに」
「そうか?つーかカッコと関係あんの、そういうのって?」
童顔、と言われたことは気にしていないらしい琴見は首を傾げながら梛月を見て訊く。
「俺はそういうのあまり気にしませんけど…というか、金髪切れ目でもナメられてる人だって居るんですから、大丈夫でしょう」
「んだと梛月!!」
「誰も朝近先輩のことだなんて言ってませんが」
口に手を当てて笑う梛月に、朝近は余計に腹を立てる。
朝近をからかう梛月に、そうとわかって怒る朝近。
そんな光景を見ながら琴見は楽しくランチタイムを過ごす。
不良校とは思えないほどの穏やかで普通の男子高校生の昼休み。
後輩にからかわれ続ける同級生の友達を笑いながら、
琴見は大好物のたまごやきを後輩に奪われた。
(「てめぇ梛月ぃ!!」)
(「相変わらず料理上手いですね、琴見先輩」)
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