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*clap serial
あけました

「なぁ!!待って、やっぱいい!やめる!」

「なんですか今更。嫌ですよ俺、せっかく必要なもん持ってきたんですから」

「無理無理!怖い!俺痛いの嫌いだもん!」

「何言ってんですか、あんだけ喧嘩しまくってる人が」

「初めてなんだから仕方ないだろ!」

「はいはい。ちょっと触りますよ。俺手冷たいですからねー」

「ひゃっ…」

「なんつー声出してんですか…」

「冷たい!お前の手冷たい!!」

「言ったじゃないですか…。あ、先輩やわらかいですね」

「え、ちょ、何近づけてんの!?待って!心の準備とかさせて!?」

「わかりましたー。あと三秒で行きますね」

「早ッ!?三秒!?」

「さーん、にー、」

「ちょ、ま…」

「いーち」



パチンっ



小さな音が室内に響き、同時に片方の少年の髪が小さく揺れた。きれいな茶髪を揺らした少年は、年甲斐もなく目じりに涙を溜めている。

もう片方の、黒髪の少年は苦笑した。

これが、不良校と悪名高い我が校で二年最強を謳われている先輩か、と。

ていうかピアス開けるくらい、女の子でも泣いたりしねーよ、と。

「反対はどうします?」

「いい!もういい!」

「はいはい。ちょっと、逃げないでくださいよ。後の処理しないと膿んじゃいますよ」

即座に戻ってきたことに再び苦笑をこぼす。
左耳に開いた小さな穴。
意味があるわけではない。ただ、無意味に、高校生らしく、好奇心で開けただけだ。
そんな理由で開けている人など、特に自分たちの学校には山ほどいる。

ただ。
自分の耳にあるピアスを見て開けたいと言った、尊敬する先輩の耳に開いているその穴を見て少しだけ嬉しくなったのは、
――自分だけの秘密だ。



(しかし彼はまだ知らない)
(翌日その先輩がピアスを見せるために女子のようなピンで髪を留めて来ることを)
(そしてそれが異様に似合うことを)


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あきゅろす。
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